ビショップズ・キャッスルのレコード店について、アラン・サンダース氏に相談した。彼はルビニ・レコードのサイド・グレイ氏と並んで、何でも相談できる友だった。アランは首を傾げた。「私は何度か行ったことがある。確かに素晴らしい店だが、とにかく遠いし不便なところだ。君は運転できないんだからね、無理だと思うよ」と。私はホテルの部屋で地図を広げた。パソコンなどなかった時代である。その頃、トスカニーニのビデオ全集が発売になり、私の店は全国第2位の販売数を挙げたことで、ソニーから表彰され、当時まだ出始めだった書院のワープロをご褒美に戴いた。勿論、今のパソコンの機能には遠いが、それが最先端だった。つまり、グーグル地図の検索などなかった時代に、私は列車とバスまたはタクシーを乗り継いでビショップズ・キャッスルに出掛けたのである。  朝の五時にホテルを出て、ロンドンから列車で中部イングランドのバーミンガムに向かう。そこで乗り換えて北東リヴァプール方面への中間点シュルーズベリーで降りる。さて、駅前からバスが出ていた。1時間に一本のビショップズ・キャッスル行き。そうしているところに停まっている1台のタクシーが目に入り。迷うことなく乗った。運転手はけげんな顔をして言った。「200ポンドは越えますぜ、旦那さん」と。4万円か、仕方ないだろうと、私は頷いて乗り込んだ。なだらかな起伏が多い、時々すれ違うために道幅が広くなっているような田舎道が続く。両側に柵が張り巡らされ、その中には至る所に羊の群れ。牛や馬もたまに見かける。スコットランドを除くイギリスには高い山がほとんどない。だから、見晴らしは素晴しい。鼻歌でも歌いたくなる気分でいたところに、「着きましたぜ!」の声。目の前にレコード店ヤーブルーハウスがあった。