ウェールズには大きな炭鉱が多かった。それがイギリスの産業革命を支えたらしいが、燃料が石油に代わるや町は一気に衰退した。それでも、先に書いた方言への愛着と同時に、イングランドへの同胞意識は極めて高い。一つには古くからあるイギリス王室における皇太子を『キング・オブ・ウェールズ』を呼び続けていること。習慣として王位継承者として生まれる者は、ウェールズ出身となり、この呼称で皇太子となるのだ。この辺の経緯は映画「わが谷は緑なりき」に詳しい。また、カーディフの町ではどこでも「ドラゴン」の彫刻や旗を見かけた。これはウェールズの象徴であり守り神である。私の頭の中では火を噴くドラゴンと炎を上げるボタ山(石炭の山)が重なって仕方がなかった。炭鉱で栄えた町は多くの貧民を残した。ウェールズに入った途端感じた貧しさには理由があったのだ。  カーディフ・マーケットは二年ほど通った。いつ行っても期待に応えてくれる新着レコードが豊富だったし、とにかく安かった。夫婦でやっていた店で息子らしき若者もいた。だが、顔なじみになった頃、突然として店は無くなっていた。小さな店も何件かあったし、列車で30分のところにニューポートという町があり、そこにも2~3件の店があった。だが、ウェールズでのハンティングの魅力は大きく後退した。何とかウェールズでの買い付け先を探そうとしていた私の耳に願ってもいない話が飛び込んできた。カーディフから北に列車で4時間のところにビショップズ・キャッスルと言う小さな町がある。コレクターは時間をかけてドライヴして向かうそうだ。地図とにらめっこして探したら、本当に小さな町でウェールズとの境にあるイングランドの町だった。列車を乗り換え、さらにバスかタクシーで一時間要するようだ。こんな時一層やる気が出てしまう性分の私は決心した。