年5回程度の海外買い付けは順調に進んだが、そのために社内にいてするべき仕事、つまり接客や通信販売のためのリスト作りなどに支障をきたすようになった。品揃えが好評を得て顧客も増え、多くの人から「無理だね」と懸念されていた商売は軌道に乗ってきたが、私一人ですべてをこなすのは難しくなった。将来に備えるためにも後進を育てなければならないと考え、少しずつ増えてきた従業員の見込みあるものに、海外出張をを任せることにした。勿論、私が先頭に立って進めなければならないが、せめて年に1~2度任せることが出来れば社業にとってもプラスになるだろうと考えたのである。かと言って、これには困難が伴う。単なる海外旅行でも危険は伴うのに、大金を持っての買い付けは不安が大きい。そして、私自身、部下の出張中は新たな心配の種が増えるのだ。  とりあえず、アメリカ西海岸から部下の出張は始まった。取引先はどこでも親切に受け入れてくれた。買い付けに慣れている私と部下の成果には大きな開きがあるものの、人は成長するものだ。2~3年してイギリスにも部下が出向くようになった。数年経って、社員にとっては海外出張で成果を上げることが大きな満足になっていった。私が切り開いた道を後進が歩んでいるということは私にとっても励みである。それでも、海外買い付けは私の仕事の中枢をなす。これまで開拓した出張先は社員に任せて、私は新たな買い付け先を探すのが大きな目的となった。例えば、フランスはパリだけではないし、イギリスにはスコットランドやウェールズもある。そしてアメリカでは、ボストンやシカゴなどの話はアメリカで出会ったコレクターたちの間で時々出てくる。それにドイツやオランダも魅力がある。円高や神武以来と言われた景気の上昇に支えられて私の夢は膨らんだ。