アカデミー・ブックス&レコーズ(以下アカデミーと呼ぶ)は2階に店と全く同じ広さの倉庫を持っており、そこには10万枚近いレコードの在庫が山と積んであった。アメリカでは日本のレコード会社が流通で使用する箱よりは4割り方大きめのものを使う。1枚ものをぎっしり詰めれば120枚入る。ここでレコードの重さに触れておこう。私は経験上ジャケットに入ったレコードは通常4枚で1Kgと考えている。だから、4000枚の荷を作れば1トンの重さになる。 またひと箱の重さは30Kgとなり、これを上げ下ろしする作業には大変な労力がいるが、これがレコード・ハンティングするものの大切な仕事であるから、体力に自信がなければ続けられない。実際長年の間に何度かの“ぎっくり腰”を経験しているし、80歳にならんとする今の私には、どうしてもアシスタントが必要である。  アメリカの家屋は天井が高い。アカデミーの2階の天井も高い。彼らはそこにレコードの入った箱を6段重ねにする。これを上げ下ろしするときは、目一杯レコードが入った箱の山を階段のように積み重ねて、その上を登っていく。一番上は2メートルを超え、天井までは30センチほどの隙間があり、そこで箱を開いてレコードを取り出してチェックすることもできる。進めやすい作業は、上の段からレコード箱で出来た階段を上り下りしながら上部の箱をいくつか下ろし、見終えた箱は目一杯にして、新たな山を築いていくのである。この作業で私が可能なチェックは一日(約8時間)80箱、つまり8000枚のレコードである。昼食は差し入れが多いが、大抵はハンバーグかピザ。それをキャニオンならぬ見上げるようなレコード箱の峡谷に囲まれて一人黙々と食べる。侘しいなどと思ったことは一度もない。好きなレコードを目の前にいつも鼻歌交じりだった。