ニューヨークにはマニア向けの店がもう2件あった。品揃えは良いがやはり価格が高い。私は気づいた。ハリウッドでレコード店を回った時、数件ある店のすべてが割高だった。それは、観光客目当てによるものだ。映画の町を目指して世界中からやってきた人たちは、少々高くても欲しいものは買っていく。同じようなことがニューヨークのレコード店の価格にも言えるのだろう。短期観光客であれば、思いがけないレコードに出会えば金に糸目は付けない。しかも、そのレコードはハリウッドやニューヨーク旅行の思い出になるのだ。ニューヨークにレコード店はたくさんあったが、十分なクラシックを揃えているところは少なく、さすがにジャズやロックを扱う店が多く、いつでも混んでいた。そんな店に限って片隅にある処分品の中にクラシックのレア盤が見つかったりする。  当時のニューヨークのホテルの部屋には必ず電話帳が置いてあった。それは2冊あって、ひとつは個人別のもの、もう一つはイエロー・ページと言う黄色い紙に印刷された職業別だった。イギリスではどこの町に出掛けても駅に着くやすぐに電話ボックスに駆け込んだものだが、ニューヨークはホテルのサービスが良く、電話ボックスに人が並ぶのを気にしないで、職業別を開きレコード店を落ち着いてチェックできた。ニューヨークのレコード店は100件近くあったと思うがクラシックを扱っているのは十数件だった。私はそのすべてに電話をして必要な情報を得た。つまり、クラシック・レコードの在庫の可否とその数、そして定休日と開店時間は必須だった。こうして私はその後ニューヨークで最も大きな取引店となる「アカデミー・ブックス&レコーズ」を見つけた。あまり大きな期待をせずに出かけて行ったその店は大きなショー・ウィンドウに本やレコードを飾り、奥行きも相当あった。