サンフランシスコは北に延びた半島で、南は陸続きになるが、北へ向かうにはゴールデン・ゲイト・ブリッジを渡り、東へ行くには長いベイブリッジを渡ることになる。ゴールデン・ゲイトの北は山がちな上に基本的に住宅地となっており、レコード・ハンティングは見込みがない。それを越えて北へ行けば、アメリカで一番のカリフォルニア・ワインの産地となる。ベイブリッジを渡れば、北側は有名な大学のあるバークレー、南側はオークランドとなる。この二つの町、特にオークランドには数件の良い店があり、私は宿を取って数日間滞在するようなった。こうした時、梱包を済ました20箱程度のレコードは運送会社に頼んでホテルから空港エリアにある会社の倉庫に運んでもらう。また、サンフランシスコにはバートと呼ばれる地下鉄がありこの二つの町を結んでいるので便利だった。  勿論メインはサンフランシスコの中心部であった。名物オーナーのいた「魔笛」が廃業しても、良い店は多かった。サンフランシスコとロサンゼルスでの買い付けはほぼ互角だった。ヘイト・アッシュベリー交差点近くにあるロック中心のリサイクル・レコードは繁盛しており、ヒッピーで賑わっていた。そんな店にクラシックは似合わないのだが、店主のブルースは出掛けるたびに地下に山ほどのクラシックの新着を用意していた。それらの半数を選ぶのが私の買い付けペースだった。私が選ばなかったレコードの山は、処分方法があったのだろう。何故なら次に出かけた時は前の在庫は無くなっており、新着の山が用意されていたのだ。一休みに近くの喫茶店へ行く途中いつも見掛けたのが街路樹の花を目当てに飛んでくるハミング・バード(ハチドリ)だった。体長8センチほどの小さい鳥が目にも留まらぬ速さで羽ばたき、空中に静止して長い嘴で蜜を吸っている光景は絵になった。