遅れて着いたわけでは無かったが、デュマゼールご夫妻はアパルトマンの入口で待っていた。傍には落ち着きなく尻尾を振っている愛犬のバンビ(チワワ、フランス語ではシワワ)。皆で乗り込んだ乗用車はパリの町を抜け一路東へ。それほど経たずに両側に広い農地が広がる。一時間もたった時小さな村に差し掛かり、デュマゼール氏が「ランチ」と言って古めかしいレストランの前で止まった。給仕(ガルソン)との会話の様子から、デュマゼール氏が常連であることが分かる。彼はメニューを見ることもなく私に「フィッシュでいいかい」と尋ねるや、頷く私を見てガルソンは離れていった。私はホーヴでのグレイ氏との昼食を思い出し、フランスではデュマゼール夫妻と同じお付き合いが始まるのだと思った。料理が届くや途端にバンビが忙しなく尻尾を振り始め、賑やかな昼食になった。  レストランは別荘とのほぼ中間点だった。途中廃墟に近い建物が道の両側にいくつも見えた。それらは中世の建物の名残だった。歴史的なものを大切にするのは、それが自慢だからだ。両側に広大なトウモロコシ畑が広がる曲がりくねった道を抜けるや、再び小さな村。数分後に車は止まった。ルネ・ドリアが「ヴォワラ(ここだよ)」と言ってドアを開けるや、バンビが飛び出していき、大きな扉の前で声を上げている。しっかりした石造りの大きな二階家で外壁一面につた植物が這っている。中に車を止めて家と庭を案内される。ここから驚きが続き大きな期待が膨らむ。部屋と言う部屋の壁一面に所狭しとレコードで埋まった棚が並んでいる。私は世界の大コレクターのコレクションを前にしている実感がやっと湧いてきた。レコードの部屋は5つか6つあり、残りは台所、食堂そして寝室だった。その後広い庭も案内されたが、ハンティングを始めたくてうずうずしていた私だった。