ロサンゼルスには頻繁に出かけるようになりました。何よりも飛行時間は8時間と短く、朝到着するので行動し易かったのです。イギリスとアメリカへ交互に出掛けるようになりました。クラシック・レコードと言えば圧倒的にイギリス盤の人気が高かった時代ですが、そのために競合店はアメリカ盤に手を出さず、そのお陰でアメリカ盤をたくさん揃え始めた弊社が喜ばれるようになったのです。要望が多かったのはRCAとコロムビア。共にアメリカで活躍したアーティストを中心に多くの名盤を抱えていました。中でも一番人気は「リヴィング・ステレオ」の名で呼ばれたRCAの初期ステレオ録音。ライナー、ミュンシュそしてハイフェッツのオリジナルLPの良品は中々見つからず、運良く手に入ったものは、タイトルを問わず奪い合うように買い手がついたものでした。  しばらくの間、ハリウッドを中心に回っていました。メルローズ通りにあった店『アーロンズ』は珍しくクラシックLPの在庫が豊富で、クラシック愛好家のレコード・ハンティングを満足させていましたが、何年かしてハイランド・アヴェニューに移り、2倍ほどの大きな店になりました。ここの店主は私を気に入って、いつでも陰の部屋から新着の詰まった段ボール箱をたくさん持ってきては見せてくれました。ここでは大量に買っても、ホテルまでタクシーで一区間ほどだったので、選ぶ手はついつい止まらなかったものです。小柄な店主はクラシック好きで、サイン入りポートレートの蒐集家でもありました。私との話の途中、思い出したようにオフィスに戻るや、小さな箱を持ってきました。その中には数十枚の写真が入っていました。私は個人的興味からそれらの半数ほどを希望しました。思った以上の価格を提示されましたが、嬉しさのあまりにその値段で買ってしまいました。