今やすっかり観光化された渋谷ハチ公前の交差点のように、ハリウッドは東西に延びるハリウッド通りと南北に延びるハイランド・アベニューの交差点が中心になります。西に行けば有名なチャイニーズ・シアター、東に10メートルも行けばマクドナルド1号店がありました。南に向かえばハリウッド通りと並行して、歌で有名なサンセット通りと(古着屋が多く)若者の集まるメルローズ・アヴェニューがあります。ハイランドとメルローズでは多くのレコード店を見つけ、当時の私にとっては十分な数のアメリカ盤がハリウッドを中心に集まるようになりました。ある日の夕方、メルローズのレコード店の店先に書いてあったメッセージが目に入った私は感動しました。《Save the Records》。短い言葉でなんと言い当てている言葉でしょう。しばらくしてからこの言葉を私の店頭でも掲示しました。  ハイランドには2件の大型店がありました。『クラシカル・レコーズ』はその名の通りの専門店。初めて訪れた私は在庫の多さと内容の良さに驚き、また浮足立ちました。初めての店では、まず店頭で目ぼしいものを物色します。大抵は、その動きを窺っていた店主が一時間もすれば声を掛けてきます。「倉庫にはもっとたくさんあるよ」と。案の定ここでも声が掛りました。私は屋根裏のようなところに通され、蜘蛛の巣を払い除けながらレコードを選びました。名盤が続々出てきました。選んだレコードの山はどんどん高くなり、店主は時折声を掛けに来ます。500枚ほど選んで、ひとまず価格を確認しようと思い、入口近くにいた店主のところに20点ほどのレコードを持って行って尋ねました。返ってきた価格は途方もなく高いもので、他店の3倍もしました。彼は値下げの交渉にも応じません。一日を無駄にした悔しさがありましたが、私は全てをキャンセルして店を出ました。