大量のトスカニーニ協会盤を手に入れた私は、当然のようにトスカニーニのコレクションの幅を広げ、RCA盤を買い漁った。どこの店に行ってもたくさん見掛けた。盤質も良く、ジャケットを含めて、良いものだけを見比べて手に入れることが出来るほど豊富にあった。レコード選びで大切なことは品質である。チェックには手間がかかるが、品質の良さは信用に繋がるので慎重を期す。この点、イギリス盤の方がアメリカ盤よりずっと品質が良かった。イタリアでは新品でも粗雑な作りがあった。だが、RCA盤はアメリカが本場であり、イギリスのものよりずっと人気があった。私のアメリカ盤のハンティングはRCA/LM盤から始まった。これにイギリス協会盤を加えれば鬼に金棒で、ファンには黙って見過ごせない「トスカニーニ秘蔵盤コレクション」が出来上がる。  こうして、100タイトルを超す特別リスト「トスカニーニ特集」が出来上がった。それぞれのレコードは数枚の在庫を揃えていたので、大きな反応を期待できる。注文は時間を決めて電話で受けた。数人の社員が電話口で待機して応対した。それからが大変だった。電話は一時間以上鳴りっぱなしで、レコードの山はみるみる低くなり、在庫の無くなるものも続出した。驚いたことに、この「トスカニーニ特集リスト」は全タイトル完売と言うことになった。もちろん複数売れたものも多かった。私の店では開店当初から頻繁にリストを作り、それが販売の要になっていたが、50年ほどの社歴の中で、この時ほど大きな販売率を上げたことは無い。このリストはしばらくの間語り草となり、トスカニーニ・コレクターの間では大きな信用を得ることになった。アメリカ協会盤はその後もハリウッドの店で手に入れることができたので、そのリストで買い逃した方のために多くのものを買い続けた。