さて、前にも書いた通り、私は運転が出来ません。遠くまで出かけて買った大量のレコードを移動するのは大変です。経費は掛かりますがタクシーを使うしかありません。でも、ブライトンなど遠くの場合、当時3万円はかかったでしょう。そこで私は鉄道を使うことが多かったのです。ダンボール箱は通常80枚のレコードが入ります。約20Kgです。これを、最初はタクシーで最寄りの駅まで運びます。当時、イギリスの駅では空港で見かけるような、手押し車(トローリーと呼んでいました)をたくさん用意していました。初めての駅に着いた時は、トローリー置き場を確認します。例えば、ルビニ・レコードでの買い付けが終わったらタクシーを呼んでもらい、4個ほどになった箱を積み込むのです。イギリスのタクシーは日本でも最近増えてきた大型車で、この箱であれば7個は載せることが出来ます。  駅に着いたら、タクシー降り場に箱を重ね、トローリーを運んできて積みます。わが国でそれほどたくさんの荷物を持った乗客を見掛けることはありませんが、欧米では、駅にポーターがいるくらいで、事情はずいぶん違います。さて、それを客室に運び入れるのは憚られます。都合の良いことに、鉄道でも地下鉄でも、自転車を置く広いスペースがあります。これは何度も利用しました。さらに良かったのは、列車の最後尾には大抵郵便車が接続されていたことです。贅沢なことに一つの車両を丸ごと使っており、大体は広いスペースが空いていました。ここにダンボール箱を4個程度置かせてもらうのに苦労はありませんでした。むしろ車掌は、「取られないように注意しなさい」と言ってくれ、私が「ここに付いていていいですか」と言えば、頷いてくれました。こうして私はやがて、スコットランドからロンドンまで7時間かけてダンボール箱を運ぶようにもなりました。