専門店グラメックスではレア盤以外の情報も聞かれました。中でも多いのは、イギリス中の他の店の話でした。つまり、誰それはバーミンガムでマルツィを手に入れたとか。勿論店主のロージャーには聴こえぬような、ひそひそ話です。ブライトンの名はよく出ました。ブライトンはロンドンから鉄道で一時間強のブリテン島南端のリゾート海岸です。海を隔てればスペインになります。ロンドンでの買い付けは5年も続いていた私ですが、どうしても行きたくなり、ホテルを数日間予約して出かけました。勿論下調べは十分にして、10件ほどのレコード店の情報を得ました。ブライトンは南の終着駅で、ロンドンと比べればずっと田舎です。ワクワクして足を向けたのは小さな店ばかりでした。しかも、掘り出し物は皆無。但し、価格がロンドンより若干安いので満足できました。  私が調べたデータの中にホーヴという町のレコード店の名がありました。これまで書きませんでしたが、どんな業者でも買い付けは車で回るのですが、私は運転免許を持っていないのです。そこで、ロンドン市内であれば地下鉄が便利でしたが、この時、ホーヴまでは奮発してタクシーを使いました。ホーヴのレコード店はブライトンよりやや大きく、店主とはすぐに仲良くなり、2階にある新着レコードを快く見せてくれました。この頃になると私の買い付け量は一軒の店で百枚を超えることもあり、多くに店が特別のもてなしをしてくれました。また、イギリスには年に3回ほど出掛けるようになっており、時には、今年最高の客だなどと喜ばれるようにもなっていました。仲良くなったホーヴの店では、店からほど近いところに、3万枚のレコードを持っている男がいるから紹介しようと申し出てくれました。相当のコレクターらしく、私は日を改めて出向くことにしました。