インターネットが普及した今と違って、レコード店を探すのは容易でない時代でした。わが国で愛好家に広く読まれていた『レコード芸術誌』と同じように、イギリスでは『グラモフォン誌』が発売されていました。これらの雑誌には主に巻末に多くのレコード店の広告が掲載されていました。勿論、多くの店は広告掲載料を払えるだけのしっかりした店でした。これは情報収集に大いに役立ちましたが、更に役立ったのは電話帳です。それには二つの種類があって、一つは個人の電話番号帳、もう一つはイエロー・ページと呼ばれた企業用です。後者は取扱品目別にとても見やすくなっており、しかもおおよその住所も書かれています。私はどこの街を訪ねた時でも、この中のレコード店ページを参考にしました。時には駅に着いたらすぐに電話ボックスを探して、備え付けの電話帳を見て片っ端から電話を掛け、営業時間やクラシック・レコードの在庫の有無やら数量を確認しました。  この作業をホテルで進めるのは楽でした。公衆電話ではボックスの外でイライラして終わるのを待っている人が良くあったからです。こんな時には数件電話をするなどできません。ホテルではノートに書き写しながらゆっくりと作業が出来ました。調べがつくや、目ぼしい店には直ぐに出かけました。幸いレコード店の多くは繁華街にあったので、道に迷うことは滅多にありません。まだワープロもなく、何事も筆写の時代であり手帳は欠かせません。帰国後それらは清書して、膨大なレコード店のリスト作りが進められました。しかも、訪ねた時の印象や購入数や価格レベルなども書き入れたので、ノートは出張時の必需品になりました。時代は変わり、ワープロ管理で整理しやすくなり、今は余りにも便利なパソコンに頼る中、何故か昔の作業が懐かしく感じられます。