海外での買い付けの話を続けてきましたが、最初の数年間は頻繁に海外に出掛けることなどできません。それほど需要がなかったからです。そんな時に新着レコードを満たしてくれたのは、国内輸入元でした。仕事を始めるにあたって相談した業界の通人から出た名前は3つ。日本レコード貿易、ミューズ貿易そして日本カージナルスの名でした。私はそれらを東京に訪ね、取引をはじめました。それぞれにクラシック音楽には力を入れており、新着レコードを中心に大量の在庫を抱えていました。彼らからは毎週のように入荷情報が入り、そのリストから選んでオーダーすれば、ほとんどの話題盤は品切れなく手に入りました。勿論それらは全てファクトリー・シール(ビーニール・パッキング)の新品であり、国内盤の新譜をメーカーにオーダーするのと同じような感覚で取引しました。  しばらくして私は輸入元から届く情報だけでは満足できなくなり、直接東京に出向いて、彼らの倉庫で新着以外のレコードを物色するようになりました。これは少なくとも月一回は出掛ける私の習慣になりました。倉庫にはリストを作成して小売店に知らせるには数が十分揃わない沢山の珍しいレコードがありました。私は、それぞれの輸入元に半日ほど滞在して、汗を流しながら選びました。少なくとも通常1000枚を超えるレコードを手に入れたものでした。古い在庫に頭を抱えていた輸入元は大喜びでした。都内の店でさえ、年に数回立ち寄る熱心な担当者がいるだけなので、私の積極的な仕入れは大いに喜ばれ、時には思わぬ特価で提供されることもありました。そうして生れた互いの信頼やメリットに加え、その機会に耳寄りな情報を得たり、海外取引のノウハウを教わったり、やがて本格的に始まる海外買い付けのためにどれほど役に立ったことでしょう。