イタリア・チェトラからリリースされた50を超える「オペラ・ライヴ」の数々は、オペラ愛好家にとっては嬉しさの極みでした。1~2セット購入して満足する方は少なく、二桁を揃えて買う方も大勢いらっしゃいました。中でもマリア・カラスのライヴは数多く、一番人気でした。これに呼応して、ライヴ・シリーズを発売するレーベルがいくつか続きました。メロドラム、レプリカ、モヴィメント・ムジカ、フォイヤーそしてパラゴンなど。中には、オペラに限らず、トスカニーニ、フルトヴェングラー、ミトロプーロス、デ・サバータなどの歴史的名演奏を提供するレーベルもあり、こちらはオペラ以上に話題になりました。そんなことで、私は3度目のイタリア出張に出掛けました。  この時から本格的な中古店巡りが始まりました。もはや、グラモフォンやEMIのイタリアプレスに手を延ばすような愚かなことはしません。そして、目ぼしいメーカーや店にはあらかじめコンタクトを取ることも覚えました。永竹さんが独占なさっていたにもかかわらず、メロドラムでは歓迎されました。このレーベルの社長はイーナ・デル・カンポという女性で、「アンナ・ボレーナ」でマリア・カラスとの共演歴のあるアルト歌手でした。社長室に通されましたが、開口一番、「その椅子には昨日、ジュゼッペ・ディ・ステファーノが座っていたのよ」と言われた時は飛び上がらんほどに驚きました。リリースされたレコードは彼女のドイツ好みを反映して、カイルベルト、ベームなどがあり、オペラ好きの私は気に入られて、少量ならという条件で、取引はすんなりと始まりました。