イタリア盤の買い付けは、同業他社が手を付ける前だったことで飛ぶように売れましたが、それもつかの間、輸入専門業者が大量に仕入れ、全国に出回ったために、長く続きませんでした。それでいて、私のイタリア熱は冷めやらず、なんとか直接仕入れをしたいとの思いで、再度イタリアに足を向けました。怖いもの知らずの私はこともあろうに有名なレコード会社であるチェトラの門を叩いたのです。歓迎はされたものの、新譜の買い付けは望めず、廃盤商品の山から選ぶだけでした。そして、彼らの口から出たのは「永竹由幸」の名。日本への輸出窓口は全てこの御仁を通じるべしとのこと。この時、ミラノやローマの他社も訪れましたが、どこでもこの名が出て門前払いでした。  オペラ好きの私は著書を通じて永竹氏をとても良く覚えており、親しみも感じておりました。レコード会社からの情報を得て、私は臆面もなくミラノの永竹氏のオフィスを訪ねたのです。そこでは思いがけない歓待を受けました。オペラ談義が尽きず、どれほど長い時間話し込んだことでしょう。従業員の女性スタッフの方々もオペラ好きでした。そして、あろうことか当夜のスカラ座の招待券があるからと誘いを受けたのです。演目はペルゴレージの蘇演物でした。永竹氏ほどイタリア語に通じていない私は英文のページと首っ引きで観劇しました。素晴らしい出会いに心残りのまま帰国しましたが、その翌年だったでしょうか、帰国なさった永竹氏は東京でANF(アンフ)というレコード輸入元を立ち上げました。私は待っていたかのように取引をはじめ、大好きなオペラ・ライヴを(恐らくは全国に例のないほどたくさん仕入れました。)