好きなレコードに仕事として付き合えること。まして、それらを買い付けるために海外に出掛けて利益を生むなんて、愛好家には夢のような話です。でも、それを四十年も続けてきた身であれば、楽しいことも辛いことも、話は尽きません。  筆者(仙台レコード・ライブラリー社長の)山田は、30歳の時に開業しました。私の社会人としてのスタートは、シンガポール日本人学校での音楽教員(文部省・外務省の共同派遣)でした。そんな事情から、開業の数年後、輸入レコードへの魅力離れがたく、海外直接買い付けの夢が膨らんで、勝手知ったるシンガポールに出掛けたのです。シンガポールには仲の良いレコード店が数件あり、有名なオーチャード通りにあったベートーヴェン・ハウスと言うレコード店の経営者ミスター・コーンは、来日して我が家に泊まっていった仲で、彼曰く、「お前の為なら百万枚を用意するぞ」と。いや、とんでもない、私にとっては千枚が関の山。結局千枚にも届かぬ数を輸入しました。そこで起きたのは、税関での商標の話。つまりCOLUMBIAやVICTORそして犬のマークの無資格輸入は出来ないとのこと。何とも理解しがたい規制に、私は丸の内の郵便局に呼び出され、ジャケットおよびラベルの該当部分をすべて切り取らされるという苦痛を嘗めました。勿論、仙台に入荷後それらはほとんど利益なしの価格で売る以外にありませんでした。一方で、口の悪いお客様からは、「赤道直下から仕入れたんだから、反っているんだろう」などと根拠のない悪口を叩かれたり。私の初めての海外買い付けは、そんな訳でとても辛い思いから始まりました。さて、それから数年後の2度目の出張は?次回。